山尾志桜里氏「憲法に、緊急事態を統御する条項が必要。そして、そこには、緊急事態であってもさわってはいけない、制約してはいけない権利、そういうものをちゃんと事前に考えて、書いておくということが、人権尊重にとって極めて大事」~6.10 山尾志桜里氏 記者会見 2025.6.10

記事公開日:2025.6.12取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2025年6月10日午後3時30分より、東京都千代田区の衆議院第1議員会館にて、国民民主党が、参議院比例代表公認候補として擁立した山尾志桜里氏の単独記者会見が行われた。

 山尾氏の公認が発表された後、国民民主党の支持率は急落、しかも、これまで山尾氏が公認候補者の会見に参加せず、会見を開かないでいたことから、山尾氏を公認候補に抜擢した玉木雄一郎代表の責任が問われる事態になっていた。

 この会見が行われた翌日の6月11日、国民民主党は、「有権者や全国の仲間から、十分な理解と信頼が得られない」として、両院議員総会で山尾氏の公認見送りを決定した。

 会見冒頭、山尾氏は、この記者会見の目的について、以下の通り説明した。

山尾氏「この夏の参議院選挙、国民民主党から、全国比例の挑戦を決めていただきました山尾志桜里です。今日は、私からは、出馬の経緯、実現したい政策、そして、過去の指摘に対する説明をさせていただきたいと思っています」

 質疑応答では、過去の不倫疑惑に関する質問が集中した。IWJ記者は、緊急事態条項について、以下の通り質問した。

IWJ記者「緊急事態条項について質問します。

 山尾さんは、2021年当時、コロナ禍の頃に、『緊急事態条項自体が危険なのではなく、緊急時の権力行使によって、手続面でキチっとまともな緊急事態がなく、それを平時に冷静に議論していないことこそ危険』とおっしゃっています。

 ですが、平時に手続きを定め、冷静な議論をしたからといって、必ずしも緊急時の権力の暴走を食い止める保証とはならないのではないかと考えます。

 やはり、危険なのではないかと考えますが、いかがでしょうか? これが1点目です。

 2点目は、これは緊急事態条項の前に来る質問だと思うんですけど、外交方針についてです。

 日本は、今後も日米安保に頼るのか、自主防衛で行くのか、それとも、核武装なども視野に入れていくのか。今後の山尾さんのお考えをお聞かせ下さい」

 この質問に対し、山尾氏は次のように答えた。

山尾氏「ありがとうございます。大事なご質問だと思います。

 緊急事態条項ですけれども、おっしゃった通り、私自身も、『立憲的改憲』という本を出させていただいたこともあり、権力をきちっと統制するための憲法改正が必要なのではないかということを、ずっと発信をさせていただいています。

 今も、そう思っております。

 ただ、一方でですね、私は、憲法改正に不安を持つ方の声っていうのも正直よくわかるんです。わかります。

 本当に不安だなと思っている方の声も、しっかり受けとめて、不安だと思っている方が大丈夫だと思えるような合意形成をしてもらえるんだろうか、という心配があっても、これ、当然だというふうに思ってます。

 なので、今日、そういう方に向けても、改めて申し上げたいのは、幾つかありますけれども、かいつまんで、例えば、コロナ禍がありました。そして、コロナ禍でも、ヨーロッパの国々が、憲法を本当にその、『統制の手段』としてどう使っていったらいいかという、いろいろな会議がありまして。

 その中でも、『ベニス委員会』という会議体は、やはりこういう緊急事態こそ、本当は、憲法に、緊急事態を統御する条項が必要だと。そして、そこには、緊急事態であってもさわってはいけない、制約してはいけない権利、そういうものをやはり、むしろ、ちゃんと事前に考えて、書いておくということが極めて人権尊重にとって大事なんだと。そういう意見も出ています。

 (この点について)私はすごく納得できるところです。

 これまでの憲法改正の議論は、ともすれば、緊急事態に何でも政府が自由にできるような、そんな例外規定を開くような緊急事態条項というイメージで、世の中に伝わっておりましたし、自民党のそのもともとの緊急事態条項案にも、やはりそういう部分が確かにあって、不安な部分があります。

 ですので、ここから先ですね、(政府に)権限を開く、自由度を上げる緊急事態条項ではなくて、むしろ、緊急事態には、政府だけが独走せず、ちゃんと国会も開き続けて、ちゃんと政府の暴走も統制できる。やるべきことやってないときは、それも指摘できる。そういうことを平時のうちに国民の皆さんと国民的議論でつくり上げていこうと。

 何か、私が思っている緊急事態条項を、これがベストだというような思いもありませんし、国民民主党も全然そういう政党ではないと思いますので、そこはこれからの対話で、より何て言うのかな、安心材料といいますか。率直な対話をさせていただけたら、ということを本当に心から思っています。

 また、機会がいただけたらなということも思っています。

 そして、外交について、特にアメリカとの関係という大事なご指摘をいただきました。

 私自身は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはりこの数年ですね、やっぱり、自分の国を自分で守る国でなければ、他国からの協力も得られないということを、その現実をまざまざと、ウクライナ戦争で見せつけられてしまったんだ、というふうに思います。

 そして、一方、アメリカを見た時に、もう皆さんご案内のように、2期目のトランプ政権になりました。そして、『ディール』は重視しても、安全保障にはあまり関心がないように見える。そういった今、アメリカの姿を私達、見ています。

 そういった中で、やはり日本がアメリカ依存の自国防衛というものを、やっぱり、少しずつシフトしていく必要があるんだろうと思ってます。

 そして、もしかしたら、それは、台湾危機の緊張度を考えたときに、『少しずつ』という今までのペースでは、ちょっと間に合わないのではないかと。

 もう少し、その、防衛について、その政府だけで考えていく、政府だけで進めていく。そして国民はどちらかというと蚊帳の外で、どちらかというと、改憲派と護憲派の皆さんがそれぞれで端っこ同士で対話をせずに話し合って、真ん中の国民が置き去りになって(しまっている)。

 本当にアメリカに依存はしない、自分の国は自分で方針を律していくことができる。

 『自立』というのは、自分だけで立つという自立ではなくて、自分の国のありようを私達で規律していく。そういう『自律』の姿というものを、本当は、国民の皆さんをもっと巻き込みながら、安全保障の議論をタブーにせずにやっていく必要があるんだと思ってます。

 それは、国民民主党の結党理念にあるように、『健全保守からリベラルまでを包摂する』改革の中道政党なんだと、それを本気で思っている国民民主党に一つ課せられた使命なんじゃないかなというふうにも思ってます。

 ありがとうございます」。

 会見の詳細については全編動画を御覧いただきたい。

 また、以下の記事もあわせて御覧いただきたい。

■ハイライト(IWJ記者質問部分)

■全編動画

  • 日時 2025年6月10日(金)15:30~
  • 場所 国会内(東京都千代田区)

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